初めての入院は、5歳の時。
原因は、おぜんざいを食べすぎて下痢が止まらなくなったから。
……と、小さい頃から食い意地が張っておりました。
それは大きくなっても、あまり変わっていないようです。
海外旅行に行く時、特に東南アジアなどでは「水に気をつけなさい」とよく言われる。
お店で飲むジュースも、氷が危ないからやめときなさい、など。
初めてバリに行った時は、友人に「歯を磨くのもペットボトルの水にしなさい」とまで注意されました。
私もはじめは、その教えを忠実に守っていました。
なので、初めてタイに行った時、バンコクの屋台でアルミカップに入った氷入りの水を前に、持参した生ぬるいペットボトルの水をゴクゴク。
でも、ね〜っとりとした南国の暑さの中、アルミカップの周りにあらわれる水滴を見ると、「え〜い、ちょっとくらいやったらいいやろ!」。
翌日になっても、別にお腹が痛くなる気配はナシ。
ちょっとくらい大丈夫やん♪
確かに、3〜4泊くらいの短期旅行で、睡眠不足が続くなど疲れが溜まってる時は、日本との温度差のストレスもあり、ほんの少しの氷とかでもお腹を壊すことがあると思う。
でも、ある程度の長さの旅行では、だんだん現地の気候に体が、食事にも胃腸が慣れてくるから、現地の人が飲んでいるものだったら普通に飲んでも平気になってきた。
私も多少旅慣れてきたか?と思った頃……、
インドネシアはバンドゥン郊外の観光地、タンクバンプラフに行ったときのこと。
一人でフラフラ歩いていたら、インドネシア人のおっちゃんたち数人の群れに出会う。
「あっちに沢があるぞ。行ってみるか?」と教えてくれたので、ご一緒することに。
しばらくして、たどり着いた沢。
「この水は飲めるんだぞ、ほれ!」と流れる冷たい水をペットボトルに入れてくれて差し出してくれる。
ちょっと歩いて汗ばんだカラダに冷たい水が……気持ちいい〜と喜ぶと、おっちゃんたちもうれしそう。
そう、こういう現地の人との触れ合いが、旅行での醍醐味なんやんな〜。
喜んだ私の顔を見て、「じゃあ」と500ml入りペットボトル満タンに沢の水を入れ、「持っていけ」と。
えー、もらっていいの〜?! やった〜! 観光地だからペットボトルの水が観光地価格で2倍以上してたからうれしい〜。
たぶんね、最初に飲んだコップ1杯程度の量だったら大丈夫だったと思う。
多少は胃腸も慣れていたので。
しかーし、貧乏性な私は、その沢の水500ml、全部飲み干したんですなー。
夜頃から、トイレへ駆け込むように……。
ゲストハウスのスタッフに「どうした?」と聞かれ、かくかくしかじかと事情を話すとみんなに笑われ、「濃い紅茶を飲め。これが効くんだ」って。
インドネシアの民間療法では、濃〜く入れた紅茶が下痢にはいいらしいです。
しかーし、残念ながら民間療法で効く範囲を超えていたようです。
未明まで何度もトイレに行き、さらに吐き気までもよおす始末。
滅多に飲まない正露丸を飲んでも、効かない!
ゲッチャンゲロゲロこんにちは状態でのゲーリーは辛い……。
口に入れるもの全て吐き出してしまい、追加で飲んだ正露丸も。
これでは脱水症状を起こすぞー。
明日はジャカルタ行きの電車に乗って、2泊してから帰国やけど、これは……病院で点滴でも打ってもらわねば!
朝からヘロヘロになりながら這々の体で、乗り合いバンを乗り継ぎ、海外旅行保険のオススメ病院へ。
待たされた挙句、処置室みたいなところでハイ、て看護師のお姉ちゃんに錠剤数粒と水を渡され……、
だーかーらーーーー、
薬飲んでも吐いてしまうんやって言うとるがな( *`ω´)!!!
私がしてもらいたいのは、点滴とか!
下手な英語とインドネシア語のちゃんぽんで、違う医者を呼んでこーい!!と悪態をつき、日本の評判を落としかねない私(・∀・)b
じゃあ、としぶしぶ別室に連れていかされ、ベッドに横になり、ちょっと待っとけ、と。
ようやく、まともな処置が受けられるかも?!と、期待を胸にド待ってたら……、
髭をたくわえたダンディーなドクター登場。
心なしか、クラーク・ゲーブルに似てる気がしないではありません。
レット・バトラーに診てもらう私。
眉間に皺を寄せながら、流暢な英語で
「辛かったね。何か感染して、脱水症状を起こしているから、点滴をうちましょう」
センセー、ありがとうございます!
そう、それを待ってたんです!!!
続けて、
「ちょっと、下痢と嘔吐が収まるまでは、こちらで入院しましょう」
て。
え、いやいやいやいや、センセー、私は明日、電車でジャカルタに行くんですって!
入院なんて大袈裟な!
点滴終わって、多少調子よくなったら、薬出して帰らせてくださいよ〜〜!
うろたえながら訴えるも、ドクターは、
「君は今、とても抵抗力が弱ってるんだよ。今、ここよりもずっと暑いジャカルタに電車で移動なんてしたら、体力を奪われてしまう。帰国が3日後? わかった、じゃあこの涼しいバンドゥンで2日入院してからジャカルタに行って帰国したらいい」
と、駄々っ子の私を優しく諭します。
えー、でもー、と抵抗を試みるも、
レッド・バトラーに言われたら、もう言うことを聞くしかありません。
と、いうわけで、インドネシアでの初入院であります……。
(※ちなみに、海外初入院はトルコの首都・アンカラ)
保険会社、ドクターと相談して、個室のVIPルームへ。
さすがVIPルーム、フツーの大部屋としてなら、8床分、いやもっと入るくらいのスペースに、デーンとベッド、介助の人用のベッドに、テレビ、応客セット、冷蔵庫、などなど。
日本やったら、差額ベッド代がいくらやろう……な〜んてことを考えながらも、ホッとして寝てたら、男性看護師が入室。
心配そうな顔をして、聞いてきます。
「なんで入院してるんだ?」
「生水飲んで、吐いて、下して……」
「そーか。大変だな。困ったことがあったら、ナースコールを」
と優しく言って去ります。
しばらくウトウトしてると……、かわいらしい女性看護師が、
「なんで入院してるの?」と。
「生水飲んで、吐いて、下して……」
「そーなんだ。大変ね。困ったことがあったら、ナースコールを」
またしばらくウトウトしてると、さっきとは違う女性看護師が、
「あなた、どうして入院してるの?」と……。
おーーーーーーーい、この病院では、申し送りとか、カルテとかそういうのがあらへんのか?!
弱った患者に何回説明させるねん!!!
また、テレビを見ようと思ったら、リモコンが見当たらない。
ベッドとテレビまでの距離、ムダに広いVIPルームらしく、手を伸ばして届く距離ではありません。
点滴してるし、チャンネル変えに行けへんし。
「吐いてー、下してー」て説明するついでに、看護師さんに「リモコン持ってきてー」てお願いしたら、「うん、わかったわ、すぐに持ってくるわね」(ニッコリ)
待てど暮らせど、リモコン来たらず……。
次の「吐いてー、下してー」の説明ついでに、「リモコン……」、「わかったわ!」
これも繰り返すこと3回ほど……。
挙げ句の果てに、
「ごめんね、リモコンはないみたい……。今、テレビつけるわね」と。
えー、なんですと〜〜!?
「じゃあ、チャンネル変えたくなったら?!」と、点滴の管を指差して聞く私に
「チャンネルを変えたくなったら、ナースコール押してね」
と、ニッコリ微笑まれたら
「はい、わかりました」て答えるしかないやないですか〜〜^^;
テキトーにチャンネル変えて、言葉がわからなくても楽しめそーなのがあったら見よかいな……くらいに思ってたんで、それをいちいちナースコール……
は、流石にできません……(;´・ω・)
ええ、点滴の台をガラガラ引いて、チャンネル変えましたとも!
海外旅行保険で勧められてるトコなんで、一応この地でトップクラスの病院のはずなんですが……?!
一番いいVIPルームやったんですが……?!
なんとも、トホホな病院でのやり取り……ですが、おかげさまで2日目からはご飯が食べられるようになり、ちゃんと予定通りに帰国♪
ドクターも、看護師さんたちも、「こっちに友だちはいないの?」と聞き、頭を振る私に対し「女性外国人旅行者が一人で入院していて心細そう」と心配してくれたのか……、ほんま優しかった。
大部屋のインドネシア人入院患者のところには、お見舞い客がひっきりなしに来るのに、不必要なまでに広い個室に泊まった旅行者の私のところはシーン。
何度も入院理由を話させられたのも、もしかしたら私への配慮……?!
なーーーーんて、さすがにそんな高等テクはではないか^^;?!
元を辿れば、沢の水を500ml全部飲み干さなかったら、(たぶん)なかったであろう入院。
私の食い意地というか、貧乏性というか……が引き起こしたものだけど、人生に起こるすべての出来事一つ一つ、意味のないものなんてない。
私が汲み取るべきだったのは……、
人の優しさを感じ取れ、ということだったかもしれない。
自分の胃腸を過信するな、ということだったかもしれない。
食への執着を断て、ということだったかもしれない。
食欲以上に真実である執念はない。
~ジョージ・バーナード・ショー~