あなたの命はおいくら?

ソフトボール投げ、7メートル。
  
ドッジボールでは逃げ回る専門。
  
テニスで、ホームランなんておろか、あの大きなラケットの面にかすりもしない……。
  
  
色黒のためか、運動神経抜群に見られるけれど、それは見掛け倒し。
それはそれは、どんくさい私であります。
  
  
でも、そんなどんくさい私、ダイビングのライセンスは取ってあります^^
  
日本で潜ると高いけれど、海外だったら日本と比べると無茶苦茶安い!
  
インドネシアの北スラウェシの端っこ、マナド県のリゾート地、ブナケン島はインドネシア人も垂涎の地。むーーーーーっちゃ海が綺麗!!!
  
「潜るぞ〜!」と思って、ダイブショップ、フルレンタルで2ダイブ50ドルを探します。
  
が! リゾート地だからか、予算のダブルスコア並みの価格のお店ばっかり……。
妥協しようか、潜ることそのものを断念しようか、いやいや、もっと探そう!と、どんどん奥地へ。
  
島の中心の大きめのショップをいくつも回った後に見つけたショップは、こじんまりと、「2ダイブ60ドル」の看板を掲げていました。
  
ちょっとアクセスが悪いからか、あまり客の影はなく。
ほかのショップと比べると、ずいぶん、いや、かなり安い!
  
それでもショップのオーナーである、インストラクターのジョンと交渉して、2本で50ドルに〜。
  
ややボロいショップかな?と思ったけど、レンタルするウェットスーツなどのサイズを合わせたりして、じゃあ、また明日〜です。
  
  
ブナケンの魅力は、ダイナミックなドロップオフ。
映画『グラン・ブルー』の世界のように、グイグイ潜って……は、残念ながら、どんくさく耳抜きが下手な私はそれができず^^;
  
数メートル潜っては、ちょっと止まってキュッ(耳抜きの音)、数メートル潜ってはちょっと止まってキュッと耳抜き。
あ〜〜〜、もつたいない……。
  
とはいえ、色鮮やかなサンゴにお魚さん達が楽しめるダイビング、やっぱりステキ♪
  
どんくさくて無駄なジタバタが多いのか、私はエアの消費が人よりちょっと速い。
  
残圧計を見たら、150。さあ、これからが楽しみです^^
  
ジョンが私を見て、「ほら、キレイだろ」とサムズア〜ップ。
「うん、うん!」とサムズア〜ップ。
  
チラッと残圧計を見たら、110
ジョンに残圧を伝え、まだまだ楽めるね、の合図。
  
イソギンチャクの中にいるクマノミを見つけて、おおおー、カワイイ!
  
残圧は100さっき見た時から時間が経ってる気がするけど、あんまり減ってないな〜、私もちょっとは泳ぎが上手になったか?なーーんて思ったり。
  
透明度が高い海って、いいよな〜。
日本よりもずっと安く潜れていいよな〜。
日本やったら、優に2倍以上はするぞ〜〜。
  
残圧計を見たら、100。
  
  
……あれ、減ってなくね?
さっきからずいぶん時間経ってるぞ。

  
  
かるーーーく、疑問を感じながらも、器の大きな人間を目指す私、そんな小さなことには構いません。
  
   
   
   
   
  
  
いやいやいやいや、小さなことちゃうし!
構わなアカンし!!!

  
  
  
気づいたら、口にくわえたレギュレーターから……、空気が出てないし!
  
  
  
  
初のエア切れ。
残圧50を切ったレッドゾーンをとーーーっくに超え、残圧0?!
  
   
  
!!!!!
  
  
  
近くにいたジョンのところに慌てて行き、サインもクソもなく、彼のオクトパスをふんだくります!
  
  
ハァハァハァハァ。
  
  
ジョン、私の残圧計を見ます。
100の数字を見て、一瞬目を丸くし、「浮上するぞ」のサイン。
  
  
  
水面に上がった途端、「残圧計が壊れていたんだ!」と叫ぶジョン。
  
  
いや、それはわかってる、わかってるけど、それに対して何か言葉はあらへんの?!
  
  
なんだか解せない気持ちのまま、浜辺に戻って、何か一言あらへん?!の思いでジョンを見ると……、
  
  
  
  
「ろこ、安心しろ! さっきのは計器が壊れてたんだ。新しいのに変えてやるから大丈夫だぞ〜〜〜! ブナケンの海はサイコーだろ!?」
  
  
まったく悪びれる様子もなく、むしろ「やってやるぞ」感あふれる、堂々としたジョンの姿。
  
  
  
何言うとんねん!
一歩間違えてたら死んでたぞ!
ごめんの一言もあらへんのかい!
  
  
  
と啖呵を切って、踵を返し……たりはできなかったチキンな私……。
  
  
  
結局、ジョンからは一度も「ゴメン」の言葉はなかった。
  

  
日本人はすぐに謝るって、よく言われる。
それに対して、欧米人はあまり謝らないと。
  
謝ってしまうと、自分の非を認めたことになって、その非の責任が生じるからだとか。
  
すぐに謝ってしまう日本人は、「ほら、お前、さっき謝ったってことは、自分の責任だって認めたんだろ! 補償しろ!!!」なんてつけこまれやすい。
 
ジョンは、仕事柄、欧米人との絡みが多いから、経験則から「ゴメン」の一言がなかったのかもしれない。
  
  
物事を自分の立場からだけ見たら、怒りたくなること、泣きたくなること、いろいろある。
でも、そんな自分の感情に振り回されず、一度呼吸を整えて、「なんでそんなことをしたのかなあ?」って、相手を理解しようとしたら……?
 
ちょっと違う見方ができ、怒りや悲しみの感情も違うものに変わるかもしれないのでは。
  
  
とはいえ、ほんの数十ドルをケチったばっかりに、(何ごともなかったけど)命の危機に晒された私^^;
  
でも、気にせず、午後の2本め、翌日も2本、計4本を楽しませてもらいました〜。
  
私の命は、プライスレスではなく、数十ドル?!
 
  
経験はプライスレス
〜ヘレン・ケラー〜

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